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¥99,000
/
税込

Item No. :TMCR006
Designer:Toini Muona
Maker:ARABIA
Size :H:80mm W:111mm D:83mm

Stock 1

Toini Muona(トイニ・ムオナ)により、ろくろで制作されたユニークピースのマグ。

やや粗めのストーンウェア素地に、半艶の深い青緑や淡い紫、褐色が入り混じる複雑な釉薬が施されています。力強く立ち上がったろくろ目が残る造形と、釉薬の景色が素晴らしい作品です。

釉薬実験を積極的に行い、釉薬の偶発性を前面に押し出していた時期の作品である可能性をふまえると、1930年代後半から1940年代頃の作品であると推測されます。

Toini Muonaのマグは作例が少なく、希少な作品です。底面に『TM』のサイン。

※目立つダメージなく良い状態です。

TOINI MUONA|トイニ・ムオナ|1904–1987|FINLAND

Toini Muona(トイニ・ムオナ)は、フィンランド近代陶芸を代表する女性陶芸家・デザイナーであり、その発展を切り開いたパイオニアのひとりです。

1920年から1923年まで、上級手工芸学校(中央美術工芸学校系の夜間課程)で学んだ後、中央美術工芸学校へ進み、1926年にデザイナーとして卒業しました。卒業時には奨学金を授与されるなど在学中から高く評価され、その後も中央美術工芸学校の陶芸工房を拠点に活動。ベルギー出身の画家・陶芸家で、フィンランド陶芸教育の基礎を築いたAlfred William Finch(アルフレッド・ウィリアム・フィンチ)のもと、ろくろ成形や焼成を実践しながら制作を続けました。

1931年にはArabia(アラビア)で実習を始め、工場での制作工程に触れるなかでその実力を評価され、やがて正式に作家として迎えられました。当時のArabiaでは、作家として活動する陶芸家の位置づけがまだ確立されていないなか、Toini Muonaは中央美術工芸学校で学んだ陶芸家として初の所属作家となり、同校で陶芸を学んだ作家が産業の現場で活動する道を切り開きました。また、彼女の成功は、Arabiaが作家による陶芸制作を本格的に支える重要な契機となり、その後に立ち上がる芸術部門の設立を後押ししました。

早くも1932年には作品のコレクションを完成させ、同年11月に応用美術館で開催された初個展で発表しました。若い陶芸家のデビューが美術館で行われたことは、Toini Muonaの特別な才能が認められていたことを物語るとともに、芸術と産業の結びつきが実現しつつあることを示す、重要な出来事となりました。

Toini Muonaは、1970年にArabiaを退職するまで、粘土、釉薬、焼成といった陶芸の要素に愚直なまでに向き合い、伝統や慣習にとらわれない新しい表現を探究し続けました。卓越したろくろの技術がありながら、装飾や手びねりによる表現も取り入れ、陶芸を造形表現として突き詰めていきました。特に銅を用いた釉薬による深い赤、青、ターコイズの発色は、彼女の作品を強く印象づける要素となりました。

1930年代後半からは、非対称な歪みをもつ量感のあるフォルムや、自然のかたちを思わせる有機的な輪郭を持つ花器へと表現を広げ、1940年代には細く縦に伸びるかたちを追求し、葦や草のような自然の形から着想を得た花器を発表。自身が『草』と呼んだこれらの作品は、Toini Muonaを代表する作品となるとともに大きな反響を呼びました。1950年代には、植物のかたちを陶芸に取り込む試みをさらに発展させ、乾燥させた植物を押し当てたレリーフ状の陶板を発表しました。1960年代からは、よりシンプルで抽象的なフォルムへと向かい、陶芸を彫刻的な造形表現へと昇華させていきました。

その独自の表現は、1930年代から国際的な評価を得ました。1950年代にフィンランドのモダニズムが国際的な注目を集める以前から、Toini Muonaは国際展への出展と受賞を重ね、活動初期から存在感を示していました。その活動はフィンランド陶芸を世界に示すものであり、Toini Muonaはフィンランド陶芸におけるモダニズムをけん引する存在でもありました。

1933年と1951年のミラノ・トリエンナーレ、1935年のブリュッセル万博、1937年のパリ万博でゴールドメダルを受賞。1954年のミラノ・トリエンナーレで名誉賞、1957年にはプロ・フィンランディアメダルを受けるなど、受賞歴多数。

Arabia Art Department|アラビア芸術部門|1932–early 1970s|FINLAND

Arabia Art Department(芸術部門)は、1932年にKurt Ekholm(クルト・エクホルム)により組織化され、翌1933年にEkholmがディレクターに就任することで、部門としての体制が確立されました。

芸術部門は、工場内においてアーティストに自由な制作環境を提供する独立的な場として機能し、工業製品から一定の距離を保ちながら創作活動を行うことを可能にしました。その成果は、素材・釉薬・成形技術に関する実験を通じて工業製品へと還元され、芸術と産業の相互作用を生み出しました。また、Arabiaにおける文化的アイデンティティを体現し、対外的に発信する役割も担いました。

このような理念は、中央美術工芸学校において指導的役割を担ったArttu Brummer(アルットゥ・ブルンメル)が重視した手工芸および芸術の価値に基づく思想を背景としており、同校においてElsa Elenius(エルサ・エレニウス)の指導のもと育成された人材によって具現化されました。Ekholmによる芸術部門の制度化は、こうした教育的基盤を産業の現場において再編成したものと位置づけられます。

芸術部門には、Toini Muona (トイニ・ムオナ)、Aune Siimes (アウネ・シーメス)、Michael Schilkin (ミハエル・シルキン)、Birger Kaipiainen (ビルゲル・カイピアイネン)、Rut Bryk (ルート・ブリュック)、Kyllikki Salmenhaara (キーリッキ・サルメンハーラ)、Oiva Toikka (オイヴァ・トイッカ) らが所属しました。また、Friedl Kjellberg(フリードル・チェルベリ)は1924年よりArabiaに在籍し、芸術部門の組織化以前から活動していた作家の一人であり、部門成立後も重要なメンバーとして位置づけられ、1948年には芸術部門のディレクターに就任しました。

芸術部門の作家たちは、Toini MuonaやKyllikki Salmenhaaraに代表される、轆轤成形や釉薬表現に基づく陶芸と、Birger KaipiainenやRut Brykに代表される、レリーフや陶板を用いた装飾的・物語的表現という二つの系譜を形成しました。両者は対照的でありながら、芸術部門における表現の幅と奥行きを広げる役割を果たしました。

芸術部門の活動は国際展においても高く評価され、1930年代からパリ万博などで継続的に受賞を重ねました。特に1950年代から1960年にかけてのミラノ・トリエンナーレでは、Rut Bryk(1951)、Kyllikki Salmenhaara(1957)、Birger Kaipiainen(1960)がグランプリに輝いたほか、名誉賞においてもBirger Kaipiainen、Michael Schilkin(1951)、Rut Bryk、Toini Muona、Kyllikki Salmenhaara(1954)らが選ばれ、Aune Siimes(1954)は金賞を受賞しています。とりわけKyllikki Salmenhaaraは、1951年から1960年にかけてグランプリを含む4回連続で受賞するなど、芸術部門の国際的地位を支える重要な存在となりました。

1970年代前半には組織再編に伴い、芸術部門はAtelier部門へと名称および機能が移行し、独立した部門としての役割はこの時期に一つの区切りを迎えました。

その理念は現在にも受け継がれ、Art Department Societyの活動にも引き継がれています。


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